大判例

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仙台高等裁判所 昭和27年(う)148号 判決

(イ) 記録を調査するに原審第四回公判において検察官が刑事訴訟法第三百二十八条に基き取調べを請求した田中吾八及び福田三之丞の検察官に対する各供述調書はいずれも昭和二十五年四月二十六日附の調書であることは記録に編綴された訴訟書類の順序により窺知し得られるところであるが、原審において適法な証拠調を経ない田中彰に対する司法警察官の第一回供述調書、同人に対する検察官の第一回供述調書、福田三之丞に対する検察官の供述調書、森貝栄一に対する司法警察官の第一回供述調書、同人に対する検察官の供述調書、田中吾八に対する司法警察官の第一回供述調書が記録に編綴されていることは所論指摘のとおりであつて右は明らかに訴訟手続に違背するものといわざるをえない。

しかして斯る書類は孰れも公訴事実を直裁的に断定しうべき内容を包蔵するものであるから、この書類を通読した裁判官は事件につき予断を抱くに至る虞が自ら芽生えるであろうことは否定しえない。さればこそ刑事訴訟法第二百五十六条第六項は「起訴状には裁判官に事件につき予断を生ぜしめる虞のある書類その他の物を添付し又はその内容を引用してはならない」と明定してこの危険を未然に防止しようとしているのであろう。この趣旨と対比して、本件を考慮する時前叙の如き手続違反は判決に右書類を直接の証拠として摘録しなかつたとしても破棄原因である判決に影響を及ぼすべき訴訟手続上の法令違反に該当する。

(中略)

(ロ) 原審第三回公判において裁判官は訴訟関係人に対し反証の取調べの請求等により証拠の証明力を争うことができる旨を告げたところ弁護人は被告人が田中吾八から三万円小切手を受取つたのは、借入金である事実を証する為証人として相馬謙一、田中彰を、福田三之丞から受取つた三千円も借入金である事実を証する為証人として福田権太郎を、森貝から黒ラシヤズボン一着を受けた事情につき証人村井昭夫を、被告人の素行等につき証人中島大助、家口彦幸、西村久弥、古川家寿の各取調を求めたがいずれも右請求を却下したことは、所論のとおりである。しかしながら被告人又は弁護人が之に対し何等異議の申立をした形跡もないのであるから右証拠調の請求を却下したからとて刑事訴訟法第三百八条刑事訴訟規則第二百四条に違背する違法な手続であるとはいえない、何となれば裁判所は訴訟関係人に対し証拠の証明力を争うため必要とする適当な機会を与えれば足るのであつて、その申請を必ず採用しなければならない趣旨ではないと解するのが相当であるからである。しかも本件について、これをみるに被告人は原審第一回公判において起訴状の公訴事実を読聞けられ、これに対し事実その通り相違なく別に述べることはないと陳述し、その後に至り収受した一部の金品は職務に関係がない旨弁解して居るが贈賄者である田中吾八、福田三之丞、森貝栄一は原審公判廷において、それぞれ取調べて居るのであるから弁護人の右申請にかかる証人はいずれも、その取調べの必要なきものとして却下せられたことが窺われる。されば原審の右の処置を以て審理不尽又は訴訟手続に法令の違反があるということはできない。

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